ホイットルセーの農業区分で誰もが一度は感じる疑問、
「商業的と企業的って何がどう違うんじゃい!企業的は商業的じゃないんかい!」
に関して書いていこうと思います!
結論
結論から言えば、
違いはあるけど文字通りの違いはない
です。
こう言われてもピンと来ないかと思うのでちゃんと説明していきます。
商業的農業、企業的農業をとりあえず復習
図を載せるのはあれなんで以下のリンクに飛んでください
軽く説明すると、
商業的 | 混合農業、酪農、地中海式農業(地中海、アフリカ南端)、園芸農業(アメリカ東海岸) |
企業的 | 商業的穀物農業(アメリカ北部)、企業的牧畜(アメリカ100°N以西、南米、オーストラリア、アフリカ南部ののナミビアとかそこらへん)、プランテーション(熱帯旧植民地) |
かなりざっくりですが、そんな感じです。
ここで「んっ?」てなるんです。
「商業的と企業的はなにが違うんじゃい!」って
山川出版「地理の完成」によれば、ホイットルセーの農業区分の5つの指標は
- 作物と家畜の組み合わせ
- 作物栽培と家畜飼育の方法(技術)
- 自給作物生産か商品作物生産かの別
- 労働力と資本の投下度
- 家屋・農場の施設
であるとしています。
これに基づくならば4とか5がその区分けの基準になりそうですが、でも自給的と商業的の違いに比べて商業的と企業的の違いは漠然としすぎていますよね。
企業的と商業的の違いはなぜ生まれたのか
東京農業大学の教授である高柳長直教授は論文(参考文献参照)で、
あくまで仮説であるが、Livestock Ranchingの訳し方が問題の発端だったのではないかと考える
と推測しており、理由はRanchの概念が日本語にはないために訳すのが難しく、また、「商業的」という言葉もCommercial Livestock and Crop Farming(商業的牧畜及び耕作)という区分をホイットルセーが設けているために使えなかった。従って、「企業的」という訳が誕生したのではないかということでした。
まとめ
おそらく、ホイットルセーは商業的の代表例である地中海式の農業形態とアグリビジネスによる高度に高効率化、大規模化された農業の区分は異質であると考え、その上で「ranch」という単語を当てたのだと思います。
ケッペンの気候区分もしかりですが、漸進的に変化する様相をある一定の指標で区分しわかりやすくした概念なので、例えば企業的牧畜に属する地域が全てが牧畜を行っていると考えてはいけません。
実際、高柳長直教授によれば、
実はアメリカ合衆国では、養豚などの畜産などではアグリビジネス企業が直接生産部門の経営を行うこともあるが、現在でも家族経営農家が生産の中心である
らしいです。
確かに、映画「インターステラー」の主人公の一家は大農地を家族で経営しているような感じでしたよね。